2020年度KAWASAKIしんゆり映画祭は終了いたしました。
ご来場いただきました皆様、誠にありがとうございました。
2020年度 ラインナップ
コロナ禍により映画も、まちも、人も、大きな危機に直面しています。新百合ヶ丘のまちも同様です。また、私たちの周りでは差別や分断、格差などの問題が起き続けていることがあらわになってきています。
「こういう時だから」と、あきらめのような言葉を、今年私たちはいったい何度耳にしたかわかりません。でも、こういう時だからこそ、映画を観ることで、何か気づきをもらえ、心に力をもらえれば。映画を上映することで映画にも力を得てもらえれば。そんな思いで私たちは今年の上映作品を選びました。
今年の作品のひとつ「海辺の映画館-キネマの玉手箱」の大林宣彦監督は「映画で僕らの未来を変えてみようよ」という言葉を遺してくださいました。
26年目のしんゆり映画祭は、心新たに、これからも映画とまちと共に未来へ向かって歩んでいきます。その思いも込めた作品たちをどうぞお楽しみください。
独特の世界観で今も私たちに驚きと発見を与え続け、あふれる力で映画の未来に勇気を与えてくれる作品をお届けします。
分断、差別、格差。明日の見通せない時代を私たちは生きています。でもまだまだ希望はきっとある!今まで知らなかった生き方に出会え、未来へのヒントになる5作品です。
豊かな表現力と発想で丁寧に作られた、アニメーションの面白さを再発見できる2作品です。大人も子どももびっくり!夢中になれるかも!?
© Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018
2018年/ロシア/113分
監督:アレクセイ・シドロフ
「映画 って自由だ! ~ 2 人の巨匠に感謝をこめて~」
独特の世界観で今も私たちに驚きと発見を与え続け、あふれる力で映画の未来に勇気を与えてくれる作品をお届けします。

© 今村プロダクション
『神々の深き欲望』
あらすじ
現代文明から隔絶した南の島。約20年前、島を襲った嵐により、神田に巨岩が屹立した。島民たちはこの凶事の原因を、島の神事を司る男とその妹との淫らな関係にあると考え、彼を鎖でつなぎ、巨岩の始末をさせる。ある日、東京から島の開発工事の調査のために技師が訪れる。調査は島民の妨害に遭い、技師は熱意を失っていくが、島の娘に惹かれ、島で暮らしていく決意を固める。
おすすめコメント
今年の上半期の話題作『ミッドサマー』のアリ・アスター監督が最も好きな映画で、多大な影響を受けたと語るのがこの作品。今村監督は彼のヒーローであり、し んゆり映画祭が始まるきっかけを作ってくださった方でもあります。50年以上前の映画ってこんなに自由奔放だったの!?と驚くほど、人間の欲望と性を強烈に描いた傑作!35ミリフィルムでの上映です。ぜひスクリーンでご覧ください。
『海辺の映画館―キネマの玉手箱』

© 2020「海辺の映画館ーキネマの玉手箱」製作委員会/ PSC
あらすじ
閉館日を迎えた尾道の海辺にある映画館が“日本の戦争映画大特集”を行う。すると、映画を観ていた三人の若者が突然スクリーンの中の世界に入り込んでしまう。そこで幕末から太平洋戦争までの日本の戦史を体験する三人。やがて原爆投下直前の広島へとたどり着き、移動劇団“桜隊”と出会う。これから起こる出来事を知っている三人は、何とか劇団員たちを救おうとするのだが...。
おすすめコメント
末期癌を宣告されながらも映画を撮り続け、今年の4月に亡くなられた巨匠・大林宣彦監督の遺作です。ですが、そんな雰囲気は微塵もなく、大 林監督のぶっ飛んだおおらかなスピリッツと、平和への願いがスクリーン全体にあふれています。映画って、こんなに自由なんだ!と驚かされました。まだまだ次回作への意欲満々で、「映画で僕らの未来を変えてみようよ」という監督の希望が見えます。
「違いがあってもいいじゃない ~共に生きよう!~」
分断、差別、格差。明日の見通せない時代を私たちは生きています。でもまだまだ希望はきっとある!今まで知らなかった生き方に出会え、未来へのヒントになる5作品です。
『島にて』

© 『島にて』製作委員会
あらすじ
山形県唯一の離島・飛島(とびしま)は酒田市から定期船で75分。豊かな自然を誇り、島の全域は国定公園に指定され、島民の多くは漁業や農業で生計を立ててきた。かつて島民は1800人いたが今は約140人。住民の平均年齢は70歳以上。過疎と高齢化が急速に進むこの島の人々を平成最期の1年をかけて記録した本作は、少子高齢化の進む日本で本当に必要なものとは何かを問いかけてくる。
おすすめコメント
この島に生まれずっと暮らす老人。「漁師にはなるな」「島に帰ってくるな」と親から言われながら戻ってきた青年たち。他から移住してきた、島でただ一人の中学生とその家族。彼らを1年間丁寧に追った本作から、私たちにとって何かホッとするような「未来のヒント」が見えてくるようです。共同監督を務める田中圭さん(日本映画学校卒業)の穏やかな問いや会話も魅力です。
ゲスト(予定)

田中 圭監督
1987年生まれ。2013年、日本映画学校(現・日本映画大学)卒業。初監督作品『桜の樹の下』で第71回毎日映画コンクール〈ドキュメンタリー映画賞〉を受賞。現在、自身の企画・監督作としてドキュメンタリー映画『夢ト女トヒットエンドラン』を製作中。
『だってしょうがないじゃない』
あらすじ
まことさんは60代。広汎性発達障害があり、成年後見人の叔母やヘルパーさんたちのサポートを受け神奈川県西部の街で一人で暮らしている。まことさんの親戚の坪田監督は自身が発達障害の一つと診断を受けたことをきっかけに、まことさんにカメラを持って会いに行き、約3年にわたる交流が始まる。まことさんの日常、まことさんと監督のやりとりなどから見えてくる様々なこととは...
おすすめコメント
発達障害の人の日常ってどんなだろう?どのように老いを迎えるの?「発達障害」ってどういう「文化」なの?そう思いながらまことさんと監督の二人が「相棒」として過ごす日々を、淡々とのんびり映し出す本作を観ているうちに、ふと、気づきます。街でいろんな人と共に暮らすことってこういうことじゃない?決して特別なことじゃないんじゃない?
ゲスト(予定)

坪田義史監督
2000年イメージフォーラムフィルムフェスティバルにて大賞を受賞。2009年『美代子阿佐ヶ谷気分』2016年日米合作映画『シェル・コレクター』を公開。本作『だってしょうがないじゃない』は初の長編ドキュメンタリー作品。

近藤武夫氏
東京大学先端科学技術研究センター人間支援工学分野 准教授。博士(心理学)。専門は特別支援教育(支援技術)。広島大学教育学研究科助教、米国ワシントン大学計算機科学・工学部/DO-IT Center客員研究員を経て現職。多様な障害のある人々を対象に、教育や雇用場面での支援に役立つテクノロジー活用や合理的配慮、修学・雇用制度のあり方に関する研究を行っている。
『SKIN/スキン』
あらすじ
白人至上主義団体に育てられた青年・ブライオンは、全身を差別的シンボルのタトゥーで埋め、暴力と憎悪に満ちた日々を送っていたが、三人の娘を育てるシングルマザーと出会い、愛し合う。新しい家族とともに生き直そうとするブライオンだが、かつての仲間は脱会を許さない。執拗に追跡され、ついには恋人やその娘たちまで危険にさらされるようになってしまう...彼の下した決断とは?
おすすめコメント
全編に渡り主人公の姿に目をひきつけられるだろう。彼が生きなおす決心をした後も、彼はタトゥーやヘイト犯罪の前科のために、職につけない。恋人にも苦労をさせる。彼の生きざまには心が痛む。たくさんの「痛み」をくぐって生まれ変わる主人公、彼に手を差し伸べる人々の姿から目が離せず、明るい光が見えるだろう。ブライオン役は 『リトル・ダンサー』(2000)でビリー・エリオットを演じたジェイミー・ベル。
『淪落の人』

NO CEILING FILM PRODUCTION LIMITED © 2018
あらすじ
舞台は香港。事故で半身不随となった中年男性のチョンウィンは何の夢も抱けぬまま一人で暮らしていた。ある日、フィリピン人女性のエヴリンが住み込み家政婦としてやってきてチョンウィンの介護も始める。彼女は家族のため夢を諦めて出稼ぎに来た身。この二人が共に暮らすうちにチョンウィンはエヴリンの夢を知り、彼女の夢をかなえる手助けをしようと思い始める...。
おすすめコメント
「淪落(りんらく)」とは「落ちぶれる、みじめな」という意味。でも「淪落の人」であっても誰かの夢を応援することが嬉しく、自分の夢や希望、願いに気づき前向きになれるかもしれない。国籍や立場、境遇が全く異なる人同士でも、心を通じ合わせかけがえのない存在になれる。香港の四季とともに優しく爽やかに紡がれる物語です。観ながら心がほっと暖かくなってくるかも知れませんよ。
ゲスト(予定)

月永理絵氏
1982年生まれ。映画ライター、編集者。雑誌『映画横丁』編集人。『朝日新聞』『メトロポリターナ』等で映画評を執筆する他、〈映画酒場編集室〉名義で書籍、映画パンフレットの編集・執筆を手がける。
『タレンタイム~優しい歌』

© Primeworks Studios Sdn Bhd
あらすじ
マレーシアのある高校で、音楽コンクール“タレンタイムが開催される。ピアノの上手なムルーは、耳の不自由なマヘシュと恋に落ちる。二胡を演奏する優等生カーホウは、歌もギターも上手な転入生ハフィズを嫌っていた。マヘシュの叔父に起きる悲劇、交際に反対するマヘシュの母、闘病中のハフィズの母...。民族や宗教の違いによる葛藤も抱えながら、彼らはいよいよコンクール当日を迎える。
おすすめコメント
2009年に急逝したヤスミン·アフマド監督の心の温かさ、哀しみを知っているからこその優しさが感じられる世界。様々な民族や文化・宗教の中での違いや決まりによる隔たりがあっても、人との繋がりはあり続ける。高校生たちの歌う切なく力強い音楽に背中を撫でられ、ポンと一押ししてもらえる。観る人ひとりひとりに響く音楽がきっとある。大切な115分になりますように。