ごあいさつ

険しい時代です。 

コロナだけではありません。衰退の坂を転げ落ちている日本社会、真綿で首を絞めるように市民の暮らしはやせ細っていきます。家族の 絆はおろか、家族そのものを求めない若者たちは、すでに壮年期にまで達しています。お年寄りたちは、孤独な死を恐れ、子供たちはイジメにおびえ、引きこもっていきます。 

こんな時代に、映画に何が出来るでしょうか? 

制作費が底を打ったままの厳しい現実の中でも、必死に自分たちの映画の実現を懸命に追求し続けている作り手たちがいます。そして、 かれらの映画に刻まれた魂を求めて、映画館を探し歩く観客たちがいます。そんな作り手と観客の繋がりを、広げようとしている人々がいます。 

今年、26年目を迎えようとしている私たちの映画祭は、市民が手作りで守り続けてきた映画祭です。 

昨年の『主戦場』の上映取り止め問題で、表現の自由を脅かしたことを社会から厳しく批判され、映画人から“ 映画祭の死 ” を宣告されても、映画のある日常を必死に守ろうとする市民たちがいます。批判を恐れ、戦うことを恐れ、常に何かにおびえながらも、その歩みを止めようとしない市民たちがいます。 

映画をけして手放さない、その静かな覚悟は、実に強靭でした。 

映画人のひとりである私は、かれらに心動かされました。 

この街に、映画の灯を、たとえささやかなものであっても、ともし続けようとしています。

それは、未来に開かれた希望だからです。 

『映画とともに まちとともに』

KAWASAKI しんゆり映画祭 

実行委員長 安岡 卓治