KAWASAKIしんゆり映画祭2020・開催レポート

 1995年に川崎市の「芸術のまち構想」の一環としてスタートしたKAWASAKIしんゆり映画祭は、「市民(みんな)がつくる映画のお祭り」として新百合ヶ丘を拠点にし、26年目となりました。

私どもの映画祭は、2019年度の開催において映画『主戦場』の上映を取り止めた判断により映画関係者をはじめ多くの皆様にご迷惑とご心配をおかけしてしまいました。2020年度のご報告に先立ち、改めて心よりお詫びを申し上げます。私たちは、この事態を真摯に受け止め、映画祭が目指すべき理念を改めて明確にし、従前の組織・運営体制の見直しと刷新を行いました。さらに「映画祭再生プロジェクト」として私たちスタッフ一人ひとりが映画や映画祭が担う役割、法律的な知識などを学び・考える機会を設ける取り組みを行いました、今後も私たちが愛する「映画」とともに、この新百合ヶ丘で私たちの映画祭が担うべき役割を考え続け、取り組んでまいります。

 

2020年度は、新型コロナウイルス感染症による影響のため厳しい状況下での開催となり、恒例の「なつやすみ野外上映会」(主催:麻生区、弊法人)は中止せざるを得ませんでしたが、本祭及び中学生向け映画ワークショップにつきましては、無事に実施することができました。ご高配をいただきました皆様へ感謝申し上げるとともに、開催結果のご報告をさせていただきます。

 

■第26回KAWASAKIしんゆり映画祭2020(本祭)

開催期間 : 2020年10月25日(日)、10月30日(金)~11月1日(日)

開催会場 : 川崎市アートセンター アルテリオ映像館・アルテリオ小劇場 

延べ入場者数 : 映画祭本祭 約800人 

 

■ジュニア映画シナリオワークショップ 特別協賛:小田急電鉄株式会社

開催期間:2020年12月6日(日)~2021年2月7日(日) 計5回 

開催場所:オンライン会議室(ZOOM)

講師:三浦有為子氏(脚本家)

参加者数:2名

 

主催 

 NPO法人KAWASAKIアーツ

 

共催 

 川崎市、川崎市文化財団、川崎市教育委員会、日本映画大学、

 (一財)川崎新都心街づくり財団、昭和音楽大学

 

後援 

 新百合ヶ丘エリアマネジメントコンソーシアム、麻生区文化協会、

 NPO法人しんゆり・芸術のまちづくり、 「映像のまち・かわさき」推進フォーラム

■映画祭再生プロジェクト -連続ONLINE公開講座

 

2019年度の映画『主戦場』上映取り止めによって、映画関係者ならびに地域の皆様にも多大なご心配をおかけしました。

映画祭代表をはじめ、運営の中核を担ってきたメンバーが辞任し、一時は映画祭の存続も危うい状態でした。2020年度、私たちはこの映画祭の課題をしっかりと負い、再生の道を探る活動の柱のひとつとして、「映画祭再生プロジェクト」を立ち上げ、事態を検証することから始め、映画上映を含む意見交換会や、内部学習会を重ねました。10月初旬までに中間報告を取りまとめるとともに、『連続ONLINE公開講座』(全6回)を開講しました。この講座では、各回2~3名の講師をお呼びし、映画祭実行委員長である安岡卓治が司会兼インタビュアーを務めました。「昨年の映画祭の危機はどのような状況から生じたのか」「映画祭のあるべき姿とはどのようなものか」などについて講師のお話を伺い、映画祭スタッフからの質問にもお答えいただきました。この講座の内容は収録を行い、本祭と同時期に各回60分程の動画として配信を行いました。

 

【連続ONLINE公開講座「検証・『主戦場』上映取り止め問題とはなんだったのか?】

 

第一回 10月24日(土)20:00~

経過検証①その時、何が起こったのか?

ゲスト:金平茂紀氏(TVジャーナリスト)/森達也氏(映画監督・作家)

 

第二回 10月26日(月)20:00~

経過検証②​作り手の決意 

ゲスト:白石和彌氏(映画監督)/井上淳一氏(脚本家・映画監督)

 

第三回 10月27日(火)20:00~

経過検証③​論議を求めて

ゲスト:大澤一生氏(プロデューサー)/纐纈あや氏(映画監督)

 

第四回 10月28日(水)20:00~

映画を観客に届けるということ 

ゲスト:渡辺祐一氏(​配給:合同会社東風)/小林三四郎氏(配給:太秦株式会社)

 

第五回 10月29日(木)20:00~

映画の危機 映画祭の危機

ゲスト:深田晃司氏(映画監督)/綿井健陽氏(ジャーナリスト・映画監督)

 

第六回  11月1日(日)20:00~

映画祭が果たすべき役割

ゲスト:石坂健治氏(東京国際映画祭シニア・プログラマー)/藤岡朝子氏(山形国際ドキュメンタリー映画祭理事、独立映画鍋理事、Tokyo Docs実行委員)/志尾睦子氏(NPO法人たかさきコミュニティシネマ代表理事)

 

 今回のオンラインによる連続講座を経て、一連の経緯を多視点から振り返ることで、市民が企画・運営する映画祭として大切にすべきことを改めて確認することができました。ここからさらに、自分たちに足りない視点や心構え、知識を学ぶ機会を持ち、映画祭を見守りご協力いただいている皆様とのコミュニケーションを重ねながら、私たちが目指していく映画祭のあり方を考え続け、実践してまいります。

 市民ならびに関係者の皆様からの信頼を再び得られるよう、また、この経験を映画祭がよりよい方向に向かう為に活かしていけるよう努力してまいります。(なお、「映画祭再生プロジェクト」についての報告を現在取りまとめております。整い次第、掲載を予定しております)


 

■第26回KAWASAKIしんゆり映画祭2020(本祭)

 

『海辺の映画館-シネマの玉手箱』『神々の深き欲望』『SKIN/スキン』の上映の他、下記7作品は上映後に多彩なゲストの方々にご登壇いただき、様々な形のイベントを実施しました。

 

『島にて』

上映後に監督の田中圭さんにご登壇いただきました。トークショーでは田中さんが山形県・飛島(とびしま)で撮影された際の写真と共にリアルな島の生活風景についてお話しいただきました。大切にされてきた島での撮影ルールのお話でいかに「島のありのまま」が撮影されたのか知る機会となりました。また、日本映画学校時代のご経験もお話しいただきました。

 

『だってしょうがないじゃない』

 トークイベントは、坪田義史監督、東京大学先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授 、発達障がいの当事者でこの上映企画を行った映画祭スタッフとで行われました。障がい者が社会に果たす役割や、障がいを受容する過程のことなど、短い時間で多岐にわたる話題が飛び交いました。客席からは笑い声もあがり、和やかな雰囲気の会場となりました。

 

『淪落の人』

 映画ライター、編集者の月永理絵さんにご登壇いただき、2019年に主演のアンソニー・ウォンさん来日時にインタビューをされた際のお話などをお聞きしました。ユーモラスなエピソード、カットされたシーンのお話、香港情勢に対する関わり方など、「役者 アンソニー・ウォン」を深く知ることができ、作品の見え方も変わるトークとなりました。

 

『タレンタイム~優しい歌』

 上映終了とともに、自然と色々な所から湧きあがった拍手が会場に響く上映となりました。上映後は、地元しんゆりを拠点に活躍されている二胡奏者アコ・シャオリン(小林亜希子)さんをお呼びして劇中で演奏されていた曲「茉莉花」をはじめ、全5曲を演奏いただきました。

 

『劇場版 ごん ー GON, THE LITTLE FOXー』

映画の上映後に八代健志監督をお招きして、メイキング映像を流しながら、作品がどのように製作されたのかお話しいただきました。映像だけでなく、音へのこだわり、声優さんの演技に対する熱意のエピソードなど興味深いお話をお聞きしました。撮影で実際に使用されたごん、兵十、加助の人形を会場へお持ちいただき、お客様にご覧いただくこともできました。

 

『音楽』

7年かけて制作されたアニメーション映画『音楽』の上映後、岩井澤健治監督にご登壇いただきました。監督がアニメーションに転向された経緯や原作漫画を映画にしようと決めた理由、キャスト決めでの秘話、漫画からどのように楽曲のイメージが作られたのかなど、大変興味深い制作の裏話をお伺いすることができました。

 

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』

 クラッカー発砲での参加可能な副音声コメンタリー付き上映を行いました。コロナ禍のため、劇場で応援の発声は控えていただき、FMラジオで会場内に事前収録を行ったV8JAPAN絶叫上映企画チームによる副音声コメンタリーを配信しました。コメンタリーは、劇中の登場人物のアテレコあり、戦車の解説あり、演出への考察あり、と楽しくもためになる内容となりました。


 

■バリアフリー上映

 

映画祭で取り組んでいるバリアフリー上映は今年で24年目となりました。視覚障がいをお持ちの方に向けた副音声ガイド付き上映、聴覚障がいをお持ちの方に向けたバリアフリー日本語字幕付き上映、子育て中の方に向けた映画鑑賞中にお子さんをお預かりする保育付き上映などを行っています。

 

今年は新型コロナウイルス感染症対策のため保育付き上映は見合わせましたが、UDCast®付の作品上映という新たな挑戦にも取り組みました。視覚障がいや聴覚障がいをお持ちの方それぞれに向けて音声ガイドや字幕表示ができるアプリケーションである、UDCast®に対応している作品『島にて』を上映しました。これにより、障がいをお持ちの方に楽しんでいただける映画本数が例年よりも増えました。

 

副音声ガイド付き上映では、これまでに制作されたアーカイブから『タレンタイム~優しい歌』を上映しました。劇中の印象的な二胡の演奏シーンにちなみ、上映後に二胡のミニコンサートを企画実施し、障がいの有る無しに関らずお楽しみいただきました。

 

バリアフリー日本語字幕付き上映は、監督がADHDの診断を受けたことをきっかけに、広汎性発達障がいの当事者でもある叔父を3年にわたって撮影したドキュメンタリー映画『だってしょうがないじゃない』を上映しました。トークイベントでは、坪田義史監督、東京大学先端科学技術研究センターの近藤武夫准教授、発達障がいの当事者でこの上映企画を行った映画祭スタッフが登壇し、「障がい」の捉え方に関して等バリアフリーについての理解が深まるイベントとなりました。

 

2018年の「第10回あさお芸術・文化交流カフェ」の中で、車いす利用の方からのご意見をもとに新百合ヶ丘駅周辺の文化・芸術施設のバリアフリーマップ作成を提案、独自にマップを試作しました。その活動を契機にして、今年度、麻生区の地域課題対応事業の一つとして「NPO法人しんゆり・芸術のまちづくり」が中心となり13施設の本格的なバリアフリーマップが作成されるなど、地域と連携した活動も広がりを見せています。


 

■ジュニア映画制作ワークショップ

 

本年度は新型コロナウイルス感染症拡大防止の対策として、例年通りのグループ制作によるワークショップの実施は見合わせ、完全オンラインによる実施を前提としたワークショップ企画の立ち上げからスタートしました。運営スタッフによる議論を重ねた結果、本ワークショップとして初めての試みである、中学生のための『ジュニア映画シナリオワークショップ』を開催することとしました。

 

安定したWi-Fi環境の整備をはじめ、接続のためのPC、タブレットなどデバイスの用意、受講生自身がそれらの操作をする必要がある等、例年と比べると多数の参加条件がある中、2名の中学生が参加されました。

 講師には、脚本家・三浦有為子(みうらういこ)さんをお招きし、全5回の講座で10~30分程度の映画シナリオを書き上げました。映画祭のバリアフリー副音声制作スタッフたちの協力により、各シナリオの本読みを行い、2020年度のワークショップは終了しました。完成シナリオを冊子として受講生に配布し、受講生の今後の創作活動の足掛かりとなるよう願っております。


 

■新型コロナウイルス感染症拡大防止対策

~ご協力ありがとうございました~

 

劇場で安心して映画を楽しんでいただくために、体温測定やマスク装着、ソーシャルディスタンス確保等の基本的な対策に加え、神奈川県の「感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム」の利用や、万一のために来場者の方々への連絡がとれるような情報の収集等、徹底した対策を実施いたしました。おかげさまで無事に本祭を終了することができ、来場者アンケート集計の結果でも、多くの皆様から対策は十分な対策がとられていたとのご意見を頂戴いたしました。お客様をはじめと関係各位のご協力に感謝を申し上げます。

 

新型コロナウイルス感染拡大による影響が続く中、2021年度も感染拡大防止に努めながら、映画祭の開催に向けて準備を進めてまいります。引き続き皆様のご理解とご支援のほどよろしくお願い申し上げます。

 

2021年3月  NPO法人KAWASAKIアーツ・KAWASAKIしんゆり映画祭実行委員会